採用・育成が変わる!BJTビジネス日本語能力テストとは?【行政書士×日本語教師が解説】

近年、労働力確保や事業のグローバル化推進のため、多くの企業様が積極的に外国人材の採用を進めていらっしゃいます。多様なスキルや視点を持つ外国人従業員の活躍は、組織の活性化やイノベーション創出に大きく貢献することが期待されています。
しかしその一方で、外国人従業員を受け入れる現場では、コミュニケーションに関する課題に直面することも少なくないのではないでしょうか。特に「言葉の壁」は、多くの企業様が共通して抱える課題の一つかと存じます。
日常的な挨拶や簡単な会話は問題なくこなせる外国人従業員の方でも、
- 取引先への電話応対やビジネスメールでの適切な敬語・謙譲語の使い方
- 会議での状況に応じた的確な報告、提案、質疑応答
- 社内規定や業務マニュアル、契約書などの正確な読解
- 日本特有のビジネス慣習(例:報連相、時間厳守の意識など)を理解した上での円滑な対人関係構築
といった、日本のビジネスシーン特有の高度な日本語コミュニケーションとなると、難しさを感じることが多いようです。
また、雇用する企業の皆様にとっても、「どのくらいの日本語力があれば、どのレベルの業務を安心して任せられるのか」「採用候補者の日本語能力を、面接だけで正確に見極めるのは難しい」といったお悩みがあるのではないでしょうか。
実は、普段の「日常会話」で使われる日本語と、ビジネスを円滑に進めるために必要な「ビジネス日本語能力」は、求められる質が異なります。後者には、語彙力や文法の正確さに加え、相手や状況に合わせた表現の使い分け、ビジネス文書の理解力、そして日本のビジネス文化に対する理解などが含まれます。
このような背景から、外国人従業員の「ビジネス日本語能力」を客観的に、そして正確に把握するための共通の「ものさし」が、企業の採用活動や人材育成においてますます重要になっています。
そこで注目されているのが、「BJTビジネス日本語能力テスト」です。
このテストは、まさにビジネスの現場で求められる実践的な日本語コミュニケーション能力を測定・評価するために開発されました。
今回は、このBJTビジネス日本語能力テストに焦点を当て、その内容や企業様にとっての活用メリットなどを詳しくご紹介していきます。
まずは、貴社で活躍されている、あるいはこれから採用される外国人材の「ビジネス日本語能力」について、改めて考えるきっかけとしていただければ幸いです。
もくじ
BJTビジネス日本語能力テストとは?
冒頭で、外国人材の活躍推進において「ビジネス日本語能力」を客観的に把握することの重要性についてお伝えしました。その有効な指標となるのが「BJTビジネス日本語能力テスト」です。
今回は、このBJTビジネス日本語能力テスト(以下、BJT)について、その概要や特徴、そしてよく比較されるJLPT(日本語能力試験)との違いなどを具体的に見ていきましょう。
BJTビジネス日本語能力テストの基本情報
BJTは、公益財団法人 日本漢字能力検定協会によって実施されているテストです。その最大の目的は、「ビジネスの場面における日本語でのコミュニケーション能力」を客観的に測定・評価することにあります。
【BJTの主な特徴】
- 実施団体: 公益財団法人 日本漢字能力検定協会
- 測定する能力: ビジネスシーンに特化した、実践的な日本語コミュニケーション能力
- テスト形式:
- 主にCBT(Computer Based Testing)方式を採用しており、受験者はパソコン上で問題を解き進めます。指定されたテストセンター会場で受験します。(※最新の実施形式は公式サイトをご確認ください)
- テストは「聴解」「聴読解」「読解」の3つのセクションで構成され、所要時間は合計で約2時間です。ビジネスメール、会議の音声、報告書、図表など、実際のビジネスシーンで触れるような多様な素材が問題として出題されます。
- 評価のポイント: 単に日本語の文法知識や語彙量が多いかを見るのではなく、提示された情報を正確に理解し、それに基づいて適切に判断・行動できるか、といったビジネス遂行に直結する実践的な能力が重視されます。
JLPT(日本語能力試験)とはどう違う?
日本語能力を測るテストとして最も広く知られているのは「JLPT(日本語能力試験)」です。BJTとJLPTは、どちらも日本語能力を測る点では共通していますが、その目的や評価する側面に違いがあります。
比較項目 | BJTビジネス日本語能力テスト | JLPT(日本語能力試験) |
---|---|---|
主な目的 | ビジネス場面での日本語コミュニケーション能力の測定・評価 | 一般的な日本語知識とその運用能力の測定・認定 |
評価する能力 | ビジネス遂行に必要な実践的・応用的なコミュニケーション能力(情報処理能力、状況対応力、表現力など) | 幅広い場面(日常生活、学校など含む)での基礎的な言語知識(文字・語彙・文法)と運用能力(読解・聴解) |
テスト形式 | CBT方式 | マークシート方式 |
結果の示し方 | 0~800点のスコアで評価。スコアに応じたレベル(J1+~J5)の目安あり。 | N1~N5のレベル別に試験を実施し、合否で認定。 |
簡単に整理すると、JLPTが「日本語そのものの知識や基本的な運用能力がどの程度身についているか」 を幅広く測るのに対し、BJTは「身につけた日本語能力を、実際のビジネスの現場でどのくらい効果的に使えるか」 という実践力にフォーカスしたテストと言えます。
したがって、特に外国人従業員の方に具体的なビジネス上の役割を期待される場合には、BJTのスコアがその方の能力を判断する上で、より直接的で有効な指標となり得るでしょう。
BJTのスコアとレベルが示す能力の目安
BJTの結果は、JLPTのような合否判定ではなく、0点から800点のスコアで細かく表示されます。このスコアによって、その人のビジネス日本語能力がどの程度のレベルにあるのかを客観的に把握することができます。
さらに、このスコアをもとに、能力レベルの目安として以下の6段階のレベル(J5~J1+)が示されています。
- J1+ (600点~800点): どのようなビジネス場面でも、日本語で十分なコミュニケーションができるレベル。高度な折衝やプレゼンテーションも可能。
- J1 (530点~600点未満): 幅広いビジネス場面で、日本語で適切なコミュニケーションができるレベル。会議での議論や報告もこなせる。
- J2 (420点~530点未満): 限られたビジネス場面であれば、日本語で適切なコミュニケーションができるレベル。定型的な業務や社内コミュニケーションは概ね可能。
- J3 (320点~420点未満): 限られたビジネス場面であれば、日本語である程度のコミュニケーションができるレベル。簡単な指示の理解や、基本的な報告が可能。
- J4 (200点~320点未満): 限られたビジネス場面であれば、日本語で最低限のコミュニケーションができるレベル。ゆっくり話してもらえば簡単な指示は理解できる。
- J5 (0点~200点未満): 日本語でのビジネスコミュニケーション能力はほとんどないレベル。
※これはあくまで目安であり、各レベルで「できること」のより詳細な内容は、BJT公式サイト等でご確認ください。
例えば、「海外の顧客との日本語での交渉担当者を採用したい」場合はJ1以上、「社内での日常的な業務報告や連絡がスムーズにできれば良い」場合はJ2~J3程度、といったように、企業が求める業務内容や役割に応じて、採用基準や配置・育成計画を立てる際に、このスコアやレベルを具体的な目安として活用することができます。
このように、BJTは企業の外国人材戦略において非常に有用なツールとなり得ます。 次回は、企業がこのBJTを活用することで、具体的にどのようなメリットが得られるのかについて、さらに詳しく解説していきます。
企業がBJTを活用する4つのメリットとは?
ビジネスの実践的な日本語力を測るBJTは、外国人材を雇用する企業にとって、様々な場面で有効活用できる可能性を秘めています。
企業がBJTを活用することで具体的にどのようなメリットが得られるのか、主に4つの観点から詳しくご紹介します。
1. 採用時のミスマッチを防ぎ、的確な人材を見極める
外国人材の採用選考時、「面接では流暢に話していたのに、入社後に業務指示の理解が難しかった」「日本語レベルの判断基準が曖昧で、評価が難しい」といったお悩みはありませんか?
BJTは、客観的な指標として、こうした採用時の課題解決に貢献します。
- 「仕事で使える日本語力」を可視化: 面接での印象や自己申告だけでは把握しきれない、ビジネスメールの読解力、会議での聴解力、状況に応じた判断力といった、実際の業務遂行に必要な日本語コミュニケーション能力を、BJTのスコアによって具体的に把握できます。
- 明確な採用基準を設定できる: 例えば、「顧客との折衝が多い営業職ならBJT J1レベル以上」「社内での定型業務が中心ならJ3レベル」といったように、求める職務レベルに応じた明確な日本語能力基準をBJTスコアで設定できます。これにより、採用プロセスにおける評価のばらつきを抑え、より客観的で効率的な選考が可能となり、入社後のミスマッチリスクを低減できます。
2. 効果的な人材育成プランの策定と適切な人材配置
採用した外国人従業員の能力を最大限に引き出し、活躍してもらうためには、入社後の継続的なサポートが欠かせません。BJTは、人材育成や配置計画においても有効なツールとなります。
- 個々のレベルに最適化された日本語研修: BJTスコアで従業員一人ひとりの現在のビジネス日本語能力レベルと、得意・不得意な分野を正確に把握できます。これにより、「画一的な研修」ではなく、個々のレベルや課題に合わせたオーダーメイドの研修プランを策定し、効率的かつ効果的なスキルアップ支援が可能になります。
- 能力を活かす適材適所の実現: 従業員の日本語能力レベルを客観的に把握することで、「どの業務を任せられるか」「どの部署でより能力を発揮できそうか」といった配置転換や業務分担を検討する際の重要な判断材料となります。従業員の能力を最大限に活かす適材適所の実現に繋がります。
3. 従業員の学習モチベーション向上とキャリア形成支援
具体的な目標は、人の成長を促す原動力となります。BJTのスコアやレベルは、外国人従業員にとって、自身の現在地を知り、次のステップを目指すための明確な道しるべとなり得ます。
- 学習意欲の向上: 「次の昇格のためにBJTで●●点を目指そう」「リーダーになるためにJ1レベルの日本語力を身につけたい」など、具体的で測定可能な目標を設定することで、日本語学習に対するモチベーション維持・向上が期待できます。
- キャリアパスの明確化: 企業によっては、社内での昇進・昇格の参考基準や、特定の職務へのアサイン要件としてBJTスコアを活用する例もあります。これにより、外国人従業員は自身のキャリアパスをより具体的に描きやすくなり、企業への貢献意欲や定着率の向上にも繋がる可能性があります。
4. 在留資格(高度人材ポイント制)における優遇措置
日本政府は、専門的な技術や知識を持つ優秀な外国人材の受け入れを促進するために「高度人材ポイント制」という制度を設けています。この制度では、学歴、職歴、年収などの項目に加え、日本語能力もポイント評価の対象となっています。
重要な点として、BJTはこの高度人材ポイント制において、日本語能力を証明する試験として認められています。
- BJTスコア 480点以上: 15ポイント
- BJTスコア 400点以上: 10ポイント
(ご参考:JLPT N1合格も15点、N2合格も10点として評価されます。)
高度人材として認定されると、在留期間が「5年」と長期になったり、永住権取得までの期間が短縮されたりするなど、様々な出入国管理上の優遇措置を受けられます。
これは、外国人従業員本人にとって大きなメリットであると同時に、企業にとっても優秀な人材を安定的に確保し、長期的な活躍を支援する上で非常に有利になります。特に、高度な専門知識を持つ人材の採用や、既存の外国人従業員のキャリアアップをお考えの企業様にとって、BJTの活用は検討に値する選択肢と言えるでしょう。(なお、具体的な在留資格申請手続きについては、当事務所のような入管業務専門の行政書士にご相談いただくのがスムーズです。)
このように、BJTビジネス日本語能力テストは、採用から育成、評価、そして在留資格に至るまで、企業の外国人材マネジメントにおける様々な側面で有効活用できるメリットがあります。
次回は、こうしたBJTの活用を含め、当事務所がご提供できる日本語教育サポートや入管業務サービスについて、詳しくご紹介させていただきます。
まとめ
最後に、BJTの活用と適切なサポート体制を整えることが、企業様とそこで活躍する外国人材双方にとって、どのような明るい未来をもたらすのか、改めてお伝えしたいと思います。
BJTは、成長への架け橋となる
外国人材の受け入れがますます重要となるこれからの時代において、彼らが持つ多様な能力や経験を最大限に活かしてもらうためには、円滑なコミュニケーション、特にビジネスの現場で求められる実践的な日本語能力が不可欠な要素となります。
BJTビジネス日本語能力テストは、そのための有効なツールです。
【企業様にとってのBJT活用】
- 採用時には、候補者の実践的な日本語力を測る「客観的なものさし」となり、ミスマッチを防ぎます。
- 人材育成においては、個々のレベルに合わせた教育プランを立てるための「信頼できる羅針盤」となります。
- 評価や配置においては、従業員の能力を正当に評価し、キャリアパスを示す「明確な道しるべ」となります。
- そして、高度人材ポイント制などを活用する際には、優秀な人材の確保・定着を後押しする「強力なツール」となり得ます。
【外国人従業員様にとってのBJT活用】
- 自身のビジネス日本語能力レベルを客観的に知り、具体的な学習目標を設定するいい機会となります。
- 学習の成果がスコアとして表れることで、更なるスキルアップへのモチベーションに繋がります。
- BJTスコアによって能力が証明されれば、より責任ある業務を任されたり、キャリアアップの可能性が広がったりします。
- 場合によっては、在留資格(高度人材など)で有利な条件を得られる道も拓けます。
このように、BJTを効果的に導入・活用することは、企業様にとってはより的確な人材マネジメントを、外国人従業員様にとっては日本での活躍の場を広げることを可能にし、双方にとってWin-Winの関係を築き、共に成長していくための重要な基盤となるのです。
「頼れるパートナー」として、貴社の未来をサポートします
とはいえ、「実際にBJTをどう活用していけばいいのか、自社に合った方法を知りたい」「日本語教育から在留資格の手続きまで、まとめて相談できる専門家を探している」といったお悩みやご要望もあるかと存じます。
そんな時は、ぜひ当事務所にご相談ください。
入管業務を専門とする行政書士であり、日本語教育のプロフェッショナルでもある日本語教師、この二つの専門性を持つ当事務所だからこそできる、きめ細やかで包括的なサポートがあります。
- 貴社の状況に最適化されたコンサルティング
- 実践重視のビジネス日本語研修プログラムのご提案・実施
- 在留資格申請の代行・サポート
- 継続的なフォローアップを実現するサブスクリプションサービスのご提供
これらをワンストップでご提供し、貴社の外国人材活用を力強くバックアップいたします。
当事務所は、単に手続きを代行したり、知識を提供するだけでなく、言語や文化の違いを乗り越え、企業様と外国人従業員の皆様が互いに理解を深め、尊重し合いながら、共に発展していける未来を築くための「信頼できるパートナー」でありたいと願っております。
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